ふるさと納税の本質的な問題点と思うこと

 記事だけ読むと、過度なふるさと納税返礼品を活用してカネを集めている自治体は国からお金を交付しなくていいよねと判断される、という話になってますが、そもそも特別交付税交付金とはなんでしょうか。大学の専攻は財政学だったのですが、全く関係ない会社に就職したため、まだらな知識を補完しながら書いていきたいと思います。

 

www3.nhk.or.jp

 

 

 

 

1 そもそも交付税ってなによ

 

 そもそもの話、この交付税ってなによという話なんですが、強引に説明するとこんな感じです。

  • 地方自治体は、自治体が予算に基づきそれを執行する中で住民にサービスを供給してる。
  • 自治体が税金として得ている収入は、主に住民税がある。(個人の収入に対するものや、会社の収入に対するものなどがありますが、ここではざっくり住民税と言い続けます。)
  • ただし、自治体によって、あまり人が住んでいなかったり、人はいっぱいいるけど税金をたくさん納めらる裕福な人がすくなかったり、大企業がなくて税収が多くないということがある。自治体として、お金が足りないから住民サービスを行わないということになると、そこに居住している人たちが困ってしまう。一方で、国の税金には様々な種類のものがあり(法人税所得税、消費税...etc)これを自治体にそれを配分することによって、たりないお金を補填し、自治体が住民に対して適切なサービスを供給できるようにしている。

 

2 普通交付税交付金特別交付税交付金

 

ja.wikipedia.org

 

特別交付税について、wikipediaでは以下のように記述されていますが(今回の件がもう追記されていますね)

 

 

 まずは、普通と特別の種類について整理をしないと記事の内容について深く掴むことが難しそうです。普通交付税については、以下のように記述されています。

 

  • 交付税総額の94%が普通交付税として交付される。
  • 一般的な財政需要(日々の行政運営に必要な経費)に対する財源不足額に見合いの額として算定され交付される。

 

 なので、まとめると、普通交付税交付金で普段の足りない部分を補填し、特別交付税交付金で普段の足りない部分ではカバーできなかった部分を補填しているということになります。

 

3 普通交付税交付金ってどうやって算定しているの?

 

 自治体では足りないお金を普通交付税で補っていることはわかりましたが、この普通交付税はどうやって算定しているのでしょうか。wikipediaから引用すると、

地方公共団体に対する普通交付税の額は、下記のとおり算定される。

普通交付税額 = 基準財政需要額 - 基準財政収入額

 

 となっております。基準財政需要額(ざっくり説明すると、住民サービスを行うために必要な金額)から基準財政収入額を引いて、足りない部分を補填してもらっているのですね。実は、この基準財政収入額という部分について掘り下げることによって、ふるさと納税問題の本質を掴むことができます。

 

4 基準財政収入額の算定方法

 

 基準財政収入額の算定については、総務省|地方財政制度|地方交付税のホームページにて算定方法の概要がPDF形式で公開されています

http://www.soumu.go.jp/main_content/000030008.pdf

 

 こちらの表を見て、いきなり内容が面倒な感じになっていますが、実は、この基準財政収入額のどの欄を見てもふるさと納税で入ってきたお金が書いてありません。先ほどwikipediaから引用した普通交付税額の算定式は、基準財政需要額 ー 基準財政収入額 になっていましたよね。つまり、ふるさと納税で入ってきた収入について、自治体は収入としてカウントしなくて良いので、普通交付税が減らされることがないのです。そういった事情もあり、ふるさと納税を受けている自治体は、たくさんふるさと納税を受けても、国からの補助金が減らされることはないので、返礼品としてたくさんの特典を寄付者に返すことができるのです。

 

5 国が怒る理由

 

 今までの話から、寄付を受けた自治体については、ノーリスクで寄付を受け付けられることがわかりました。では逆に、住民が寄付をした自治体についてはどうなるでしょうか。みなさんもご存知の通り、寄付をした人は、その人の収入の割合に応じて自分の住んでいる自治体の住民税が安くなります。ただし、先ほどの普通交付税の式を思い出してみてください。普通交付税は 基準財政需要額 - 基準財政収入額 という式から算定されています。寄付した人の住民税が安くなる=寄付した人の住んでいる自治体の税収が減るということになりますが、この基準財政収入額が減るということになりますので、その分ふるさと納税をする人がたくさんいて税収が減った自治体には、国から普通交付税として補填されるんですね。しかし、その補填されるお金の財源は国の税金、つまり国税になりますから、国の財政を逼迫することになります。このような事情があるので、過度な返礼品を準備するような自治体に対して国は怒るわけです。

 

6 まとめ

 

 上記事情もあり、国がこのような自治体に対してキレているのもある意味当然だと私は考えています。巡り巡って、国の税金を負担している国民の財布事情に悪影響を及ぼしているという風に考えることもできますので、ある意味私たちのために怒ってくれているという捉え方もできると思います。

 

 ただし、特別交付税を使用して報復的な措置を行なっているというこの記事で指摘しているようなことを行っていいのかという点についてはそのまま残ることになります。

 

 ここまで読んでいただいてありがとうございました。みなさんはどのようにお考えでしょうか。ご意見等コメントしていただけるとうれしいです。詳細を省いたせいで恣意的な内容になっているということや、そもそも私の説明が間違っている点等がありましたら、コメントで指摘してください。